これからの自動車産業のキーワードとして、「CASE」という言葉をよく目にします。

 Connected(コネクテッド)

 Autonomous(自動運転)

 Shared&services(シェアリング)

 Electric(電動化)

「CASE」は、この4つのヴィジョンの頭文字をとった言葉です。

2016年9月にパリで開催されたモーターショー「モンディアル・ド・ロトモビル」にて、ダイムラーAGのディーター・ツェッチェCEOが、グループの中長期戦略として「CASE」という言葉を用いたのが始まりです。

ツェッチェ氏は、「若い時に電子工学を専攻すると言ったら、『おまえ馬鹿だな、機械工学にすべきだ』と誰からも言われた。しかし、この40年間は間違っていなかった」とスピーチを始め、グループの車両開発ヴィジョンとして、「CASE」を掲げ、そのヴィジョンを具現化する新ブランドとして、「知能を持つ電動車両シリーズ」EQを発表しました。

以降、この言葉はダイムラーのみならず、多くの自動車メーカーが同調する全世界的な産業ヴィジョンとなりました。この4つのヴィジョンに基づいて、車両モデルの開発にとどまらず、物流・人流サービス、燃料エネルギー、道路計画、都市開発等様々な分野で革命と呼べる変化が急速度で始まっています。

(Connected)インターネットによる外部との接続により、自動車が携帯電話と同じようにモバイルPC化します。車内にいながら様々なサービスを受けることが可能になり、自動車自体が新しい移動中のエンターテインメントを提供できるようになります。

(Autonomous)運転支援システムに加えて、自動運行装置による自動車の自律的な走行が可能となり、運転者が運転行為から解放されます。人為的な運転ミスによる事故を防ぎ、コンピューターによる走行コントロールで渋滞を緩和することができるので、安全かつ円滑な交通の実現が期待されています。同時に、運転者が移動時間を運転以外に費やすことができ、ライフタイムの充実・効率化を図ることも期待されます。

(Shared&services)従来の「自身が所有するクルマを利用する」という形から、共有する・借りる・貸す・乗り合う・乗せるという多様な利用の形を選択できるように、自動車の供給体制に変化が生じています。ここに事業性を組み合わせることで、多様な新産業が生まれることが見込まれています。

(Electric)自動車の動力を電気にすると、自動運転と親和性が高いうえ、化石燃料を動力源とするよりも自動車の構造を単純化できます。そのために自動車製作への参入の垣根が低くなります。また、未だ火力発電による燃料消費の問題、送電時の漏電の問題、電池の耐用期間・廃棄物化の問題、充電効率の問題等様々なハードルがありますが、カーボンニュートラルへの効果も期待され、世界各国で化石燃料から電気へ政策転換が始まっています。

これら4つの要素が相互に関連し合って、自動車を取り巻く産業構造が劇的に変化することは間違いありません。ビジネスチャンスが生まれると同時に、様々なリスクが潜む隙が生まれるということでもあります。このリスクを正しく見通すことがこれからの自動車産業に必要な視点でしょう。