ある物を使用することによって、他人に何らかの被害を与えてしまった場合、その使用行為が直接の原因となって被害を生じさせたわけですので、その責任は直接的な加害者である使用者の不法行為責任ということになります。
そして、この「物」が自動車で「被害」が人の生命・身体であった場合は、自動車自体がもつリスクの大きさや頻度を考慮して、責任者の範囲を広げる特別な規定が、運行供用者責任です。
ここでは、さらに1段階、間接的な加害者の話をします。この「物」が別の他人が造った物であった場合、この物自体が使用者の想定している本来の品質を備えていなかったことによって、被害が出てしまったのであれば、製造者にも責任を問うてしかるべきでしょう。これが製造物責任です。これを規定した製造物責任法という法律があります。
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示(製造業者若しくはそう誤認させるような表示又は実質的な製造業者であることを示す表示)をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
規定の文言をみてもわかるとおり、製造過程での故意・過失は要件になっていません。物自体に欠陥があって被害が出たのであれば、責任を負うという結果責任です。
ここで問題は、欠陥とは何か、です。製造物責任法に定義規定が置かれています。
第二条
2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
このように定義規定はありますが、製造物といえど千差万別ですので、結局「通常有すべき安全性」という表現を用い、事案ごとの具体的状況次第の部分は残されています。一義的に欠陥とはコレだということはできません。
そして、この具体的状況に基づく判断において、どのような視点に寄って立つべきかについては、諸説考え方がありますが、筆者は、
製造物が流通におかれた際の合理的な消費者が期待するであろうと水準の安全性を有しているか否か
を判断基準にすべきと考えています。
ですので、製造物の使用に係り他人に被害が生じた場合に、製造者もその責任を負うかは、そのときの消費者一般の感覚や社会内でのコンセンサスがどのようなものかも併せて考えなければならないということになります。
したがって、今後の科学技術の革新や社会常識の変化によって、交通事故が発生した場合にも、自動車メーカー等自動車製作者に、製造物責任を問うことは、十分あり得る話なのです。