MaaS(Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスです(国土交通省)。

MaaSは、フィンランドのスタートアップ企業MaaS Global社の創業者サンポ・ヒエタネン氏によって、2006年に発案されました。そして、同社は2016年に世界初のMaaSスマートフォンアプリケーション「Whim」のサービスを開始しました。

Whimは、無料サービスとして各公共交通機関のチケットをアプリ内で一括購入・決済ができるうえ、月額固定有料サービスとして一定範囲内の公共交通機関・シェアサイクルが乗り放題、レンタカー・シティバイクの利用、一定距離までのタクシーの利用が可能となります。

Whimは、ヘルシンキ(フィンランド)のほか、バーミンガム(イギリス)、アントワープ(ベルギー)、ウィーン(オーストリア)でサービスを展開しており、ヘルシンキでは2020年4月現在、人口60万人のうちWhim登録者数が20万人に上っています。

現在、これらの国のほか、ドイツ、スウェーデン、スイス、リトアニア、イスラエル、中国、アメリカなど様々な国でMaaSアプリがサービスを開始しています。日本では、まだ一般にはサービスを開始していませんが、各地で実証実験が行われています。

ただ、押さえておかないといけないのは、同じようにMaaS導入の取組みを行っていても、その目的は各国・各都市がかかえる移動に関する課題によって異なっているということです。

ヘルシンキでは、もともと公共交通機関の利用率が低く、移動に占める自動車の利用の割合が極めて大きかったため、渋滞が多発し、排気ガスの排出量が多いという課題がありました。この課題解決のため公共交通機関の利用率を向上させる目的でMaaSを導入しています。

他方、日本では過疎地における移動手段の確保観光地における二次交通の確保という課題解決を目的として、MaaSの導入を図っています。そして、この目的に沿う実証実験の取組みに対して、次の2つの支援制度が設けられています。

①日本版MaaS推進・支援事業の公募(国土交通省)

②スマートモビリティチャレンジ(国土交通省・経済産業省)

今後、日本においても、実証実験の段階を経て、各都市・各都道府県ごとに導入されることになると予想されます。移動の効率化にとどまらず、他の分野のサービスとも結びついて、私たちの移動そのものに対する意識が変化していくことを期待したいです。