MaaSは、利用者の移動を最適化するとても有用なアプリケーションで、日本でも実装に向けた研究・実験が進められているところです。今回は、MaaSアプリにより運送サービス利用者が予約・決済を行う際に、誰と誰の間でどのような法律関係が成立するか考えてみます。

まず、ここでの登場人物は、運送サービスの提供者そのサービス利用者、それにこの両者を繋ぐアプリ事業者ということになります。

【サービス提供者-サービス利用者間の運送サービス提供契約】

MaaSアプリを介してサービス提供者とサービス利用者の間で交わされる契約は、鉄道・バス・タクシーの旅客運送契約(商法589条以下)やレンタカー・レンタサイクルの賃貸借契約(民法601条、商法502条1号)です。

サービス提供者は、旅客運送事業やレンタカー事業を行う際は、国土交通大臣の許可が必要です。

そして、上記の契約は、インターネットを通じて予約申込みされ、決済が行われるため特定商取引に関する法律2条2項、同法11条以下に規定される通信販売に該当します。

さらに、この決済はクレジットカード、電子マネー又は仮想通貨で行われるのが、MaaSアプリの特徴です。ここでは現実の支払いが前払い(プリペイド式電子マネーや仮想通貨)か後払い(クレジットカードやポストペイ式電子マネー)かによって、適用される法律が異なります。前払いの場合は資金決済に関する法律、後払いの場合は割賦販売法に従わなければなりません。

【アプリ事業者-サービス提供者間の代理商契約】

一方、アプリ事業者は、サービス提供者とサービス利用者の間で交わされる上記の契約を媒介する役目を果たします。これは商法27条以下に規定されている代理商にあたります。サービス提供者とアプリ事業者の間には、代理商契約が締結され、委任(民法643条以下)に関する規定に服します。

【アプリ事業者-サービス利用者間の代理契約】

アプリ事業者は、サービス利用者に対して、サービス提供者を代理(民法99条以下)して、上記各種運送サービス提供契約を行います。

MaaSをめぐる法律関係は、以上のように整理できます。ですので、サービスの提供自体に不具合があったり、各登場人物が途中で関係を解消したり、サービス提供中に何らかのトラブルが起こったりした場合には、それが誰と誰の間の法律関係に係るものであるか確認し、今回整理した中のどの法律規定に従って解決されるものなのかを考えると、混乱せずに答えが導き出せるかもしれません。