CASEのA「運転の自動化」に関連して、交通事故の責任についてです。今回は自動化レベル3について。自動運行装置が動作している状態で交通事故が起きた場合の運転者以外の責任について考えます。

おさらいですが、運転の自動化レベル3とは、条件付運転自動化のことをいいます。

つまり、すべての運動制御を走行環境条件内でシステムが行うものです。ただし、この条件から外れる場合やシステムが対処できない緊急の場合等、システムが求めれば人はいつでも適切に応答しなければなりません。

逆にシステムの要請がない間は、運転者にはスマートフォンやタブレットを見ることが許されています(道交法71条の4の2第2項で、同法71条第5号の5の義務を免除しています)。ということは、運転者は、しっかりと周囲の状況に注意して運転する義務は負っているけれども、アイズオフしてよいということになります。

ですので、運転者がスマホを見ている間に、レベル3の自動運転車がシステムから何の警告もなしに先行車に追突してしまったとしたら、基本的には運転者に過失はないということになります。

となると、運転者に不法行為責任を負わせることはできません(ただし、追突された先行車に乗っていた方に人身被害があった場合の運行供用者責任を負わせることはできます)。

運転者に過失はないということになると、自動運転システムによって事故が引き起こされたのだから、システムを搭載している装置(必ずしも自動車とは限らないと思います。)を製造したメーカーが責任を負うのか?という話になります。

この問いに対しては、まだ明確な結論は出ていませんが、装置メーカーに責任があると考えるのが自然でしょう。設計・開発に過失や誤りがあったかどうかは別としてです。また、責任の性質としては、製造物責任と考えるのが最も自然だろうと思います。

このように考えてみると、全国で起きる各交通事故の責任を装置メーカーが負う可能性があるとなると、自動運転の普及により事故件数が減るとしても、過渡期には様々なレベルの自動車が混在するため、劇的な低減は想定しづらいですので、1社がかかえるリスクは膨大なものになります。保険によるリスクヘッジは必須でしょう。

また、製造物責任が認められたとなると、装置のリコールの可能性も生じます。そこでオンラインでのソフトウエアアップデートによる経済効率のよいリコール方法の確立も必要となってくるでしょう。

さらに、全国で起きる各交通事故の責任の所在を、現状のように裁判で争うということになると、これに割かれる時間もお金も大変大きなものとなってしまいます。紛争解決制度自体も実態に合わせた変容が求められるかもしれません。詳しいお話はまた別の機会に。